固定資産税評価における不動産鑑定評価の活用

不動産鑑定評価の活用

 1980年代後半において、プラザ合意による円高不況を回避するために、大規模な金融緩和が行われました。
 その結果、行き場を失った資金は、株式市場や不動産に集まっていき、資産バブルが引き起こされました。

 

 このことは、みなさんご存知かと思います。

 

 そして、この急激な地価高騰の結果、地価公示価格と固定資産税の宅地の評価額との間には、大都市を中心に大きな格差が生じることとなりました。これは、地価公示価格と固定資産税評価が、必ずしもリンクしていなかったことや、各市町村の自由裁量で、引き上げ幅がバラバラだったことが影響していたようです。
 そして、このように、公的評価間における格差は、公平・公正な課税が実現されていないと、次第に強く批判されることとなりました。(俗に、一物四価・五価と揶揄されました。)

 

 こうしたことから、国は、土地基本法を制定し、公的評価(地価公示・都道府県地価調査(基準地価)、相続税評価及び固定資産税評価)相互の均衡化・適正化を図るため、平成6年度評価替えより、宅地評価にあたっては、地価公示価格の7割を目標として評価することになりました。(相続税は、地価公示価格の8割に。)
 しかしながら、地価公示地点と固定資産税標準宅地との調査地点数には、著しい格差が存在し、このままでは、7割評価の実施は難しい状況でした。

 

 そこで、不動産鑑定評価の活用がされることになりました。
 なぜ、不動産鑑定評価が活用されたかというと、不動産鑑定評価では、面的に、都道府県レベル・市町村レベルで、評価の均衡化が図れるようになっているため、固定資産税評価の均衡化にも活かせると判断したからです。

 

 次に、不動産鑑定評価が、固定資産税評価のどの段階で、活用されているのかですが、“標準宅地の価格を求めるとき”になります。
 正確には、「標準宅地の適正な時価の評定」と言います。

 

「正常価格」と「適正な時価」

(1)不動産鑑定評価における「正常価格」
 標準宅地に係る鑑定評価において求める価格とは、「正常価格」です。
 不動産鑑定評価基準における「正常価格」とは、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」です。

 

そして、社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件とは、以下のとおりです。

 

①市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること
②取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別のものでないこと
③対象不動産が相当の期間市場に公開されていること

 

 さて、ここで言うところの「市場参加者」とは、どんな人でしょうか?

 

 この「市場参加者」とは、自己の利益を最大化するため慎重かつ賢明に予測、行動する者であり、売り急ぎ、買い進み等の特別な動機がなく、取引市場に関して通常の知識・情報を持ち、取引成立に通常必要となる労力・費用をかけ、対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行い、買主においては通常の資金調達能力を有する者をいいます。

 

 ですので、日本中をどこ探しても、こんな人はいません(笑)
 あくまで理論上に存在する人の話で、経済学でも、このような人が時々出てきます。

 

(2)固定資産税評価における「適正な時価」
 地方税法第341条第5項においては、固定資産税の価格とは、「適正な時価」と規定されています。
 この「適正な時価」とは、正常な条件の下における取引価格、すなわち正常売買価格をいい、現実の取引価格のうち、正常でない部分(不正常要素)を除去して得られる価格を言います。

 

(3)「正常価格」と「適正な時価」
 平成6年度評価替えより、宅地の評価においては、当分の間、地価公示価格の7割程度を目途として評価の均衡化・適正化をはかることとなり、宅地評価の基本となる標準宅地の評価にあたっては、地価公示価格及びこれを補完するものとして都道府県地価調査価格と不動産鑑定士等による鑑定評価価格を活用することとされています。
すなわち、地価公示価格等で求められている「正常価格」をもとに、これらの7割を目途に宅地の評価が行われています。

 

 このように、固定資産税評価において、地価公示価格・不動産鑑定評価を活用することによって、公的評価間相互の均衡化が図られ、納税者の方の理解も得やすいと言えます。

 

 また、地価公示価格の7割評価を行うことによって、残り3割部分によって固定資産税の大量一括評価によるリスク及び価格調査基準日から賦課期日までの地価下落リスク(時点修正措置でカバーできない6ヶ月間)を回避できるようになっています。

 

 

<引用文献>
平成23年度固定資産税関係資料集
「固定資産税評価における不動産鑑定評価-標準宅地に係る鑑定評価書の見方を中心に-」
(財)資産評価システム研究センター

 

 

2012年1月3日記事作成


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